「お前は怒ると訛るんだな」

笑いながら言う課長の言葉に顔がかぁ~と熱くなる。

それでも改めて、力強く抱きしめてくれる課長の腕の中でぽぉ~っとなって目を閉じる。


広い胸だなぁ。

それに、この匂い。
この確かな感触。

課長だぁ~。

頬に触れるスーツもぱりっとしてて、気持ちいいぞぉ。

大人の男性の香りって、こーゆーのを言うんだろーなー。


ええ気持じゃ~♪





……だけど、ソロソロ、いい加減、息が苦しい。



「課長、あの……離して下さい」


「……」


「えっと……その……苦し……」


「……」


「カーチョォォォーーー。無視しないで下さい」


課長の腕の中でオタつく私の耳にドアを叩く音が聞こえる。


コンコン♪

この状況はマズいだよ。


ドアをノックする音が次第に大きくなり、課長をぐぐっと引き離そうと格闘する。


「課長ってば、誰か来ましたよぉ~」

「……」


おいっ!

こらっ!

無視かい!!



それでもドアを叩く音が、またまた聞えて来る。


「か、課長ってば!誰か入ってきちゃいますよ!!」


すると、ようやく課長は私を抱き締めていた腕を解いてくれる。


ほっとしたのも束の間、「構わないさ」と呟く課長の眼差しとガチでぶつかる。

「か……構わないって、でも……課長……」


いつもは厳しいはずの課長の瞳があまあまになってる。


なんだ?

メッチャ恥ずかしいぞ。


慌てて目線を逸らし、顔を背けようとした私の頬が課長の大きな両手に包まれる。

「会いたかった」

えっ!?

いきなりそう来る?

でも、こんな課長の言葉はめったに出ないレアワードだ。

慌てて私も課長の言葉に振り返る。

「わっ、わたっ、しもっでっ……」

会いたかったという言葉は、課長の唇に塞がれ、溶かされてしまっていた。