「お前、ほんっと、ムカつくな。俺の顔のどこが恐いんだよ!」

全てですぅ~~。

でも、佐久間主任だってムカつきます。

さっきから、私の呼び方が「杉原君」が「お前」に格下げになってます!

でも、そんなこと言えるはずもなく、見下ろすお化けフェイスの佐久間主任の顔をただぐっとにらみ返す。


「佐久間主任が驚かすからいけないんじゃないですかっ!」

「そりゃ、悪かったな。別に驚かすつもりじゃなかったんだけど。
それより、杉原君。君さ、携帯とか持ってない?
このボールペンライトじゃそんなに長時間持たないと思うから」


おっ。


「杉原君」復活。

いつもの沈着冷静、ポーカーフェイスの佐久間主任に戻ってますね。

うんうん。

良かった良かった。


「持ってますよ。確か、バッグごとこの部屋に持って来て……」


呑気に言い掛けて、蒼白になる。


そう。

確かにバッグは持って来た、バッグは。




でも、ケータイは……



「スプリングコートのポッケの中においてきちゃった!!!」

「君、全然使えない」


佐久間主任は冷ややかにボソリと呟くと、ライトのスィッチをバチンと落とす。