システム室の認証スキャナーにIDカードをかざし、佐久間主任の後について急いで室内に入る。

システム室は、何トンもあるバカでかいコンピューターの発する熱を冷ますためにいつもヒンヤリとして肌寒い。

4月も下旬と言うのに、この部屋だけはいつも10度以下を死守している。

う~わぁ~……

こりゃ、寒すぎるぞぉ~!

薄着の腕をさすりながら、佐久間主任の後ろに続き、部屋の奥へと急ぐ。

「データを5分以内には修正する。杉原君はプリンタを起動して」

佐久間主任は、奥にあるコンピューターの席に座ると、スーツの上着を脱いで、ポーンと私に放る。

「あの……?」

「ここは寒い。着てろよ」

「でも……」


私の返事を待つことなく、佐久間主任は起動したコンピューターに素早く修正のプログラムをカタカタと打ち込んで行く。


はっ、速っっっ!!


動く指先はまるでピアノを弾いているみたい。

チョー速過ぎて見えない。


神業!!


まるで、課長みたいだ!


ウットリポォーっとしていると、佐久間主任の「プリンタ起動して!」の声に体が反応する。

佐久間主任が貸してくれたスーツに急いで手を通す。

げげ。

でかい。

ブカブカの袖をまくって、プリンターの裏の電源を手で探る。


えーーっと、プリンターの電源、電源。

おっ!

ありましたよ。

ここですね。


「急げ!」

「はいっ!」

「プログラム打ち込み終了。データ入力完了。送信」


えっ?もう??

私も急がなきゃだよ!

そして、私は電源に手を伸ばし、プリンターの電源を入れたつもりが……



バチッ、ヒューン



妖しい音を立てて、部屋の中が真っ暗になる。