おっとっと……

よろける私を、前の席に座っていたお見合い君がキャッチ!

「あ、すみません」

「いえ……」

いけねぇ、いけねぇ。

やっぱ、この人もカッコイイから何気に頬が赤らんでしまう。

「大垣(おおがき)さん!」

ふみねぇのマイクからの大声にびくっとする。

大垣さん?
ああ、お見合い君の名前ね。


バスを運転しながら、ふみねぇはお見合い君に向かって叫ぶ。


「大垣さんは、大型二種を乗り回すガテン系のアラサーおなごは好かんですか?」


私はお見合い君、もとい大垣さんをちらっと見る。


「いえ。別に嫌いでは……」

「「「「おおおおっっ~」」」」


村人がどよめく。


「ひっ、ひとめぼれなんです!そぎゃんうわついたことば言うおなごは好かんですかっっ?」


大垣さんはポカンと運転席のふみねぇの背中を見つめる。


「いえ、そんなことも……」


大垣さんが答えに詰まっていると、ふみねぇが涙声で声を絞り出す。


「じゃ、じゃ、じゃぁ、うちと結婚してくんしゃい!」


この言葉にはさすがにみんな度肝を抜かれ、仰け反ってる。

大垣さんはゴクリと唾を飲み、口を開く。


「結婚は……ちょっと……」

「だめ、ですか?」


大垣さんはコホンとひとつ咳をすると、「まずは友達から、でいかがですか?」と呟く。


バスの中が爆発したような歓声に沸き立つ。


良かったね、ふみねぇ。

滲む涙をそっと拭きながら、運転席を見てぎょっとする。



ふみねぇは運転席で立ち上がり、バンザイをしていた。