しーんと静まり返ったトレーディングルームの中、本部長のコホンと言う咳払いに、はっとなる。

私……

今、なんて言いました?

なんか、課長を引き止めるようなこと、言っちゃいましたでしょうか?


我に還ってから、約5秒後。

マジで我に還る。

そうなんだ。
NY……

課長が、NY!

キャッホーーーイ!!\(≧▽≦)/
鬼が出て行くぅぅぅ!


最近は可愛い笑顔を見せるようになったとは言え、この課長、本質は鬼ッス!

これで、これからは「バカヤロー」なんて言われなくてすむんだ。

バカヤロー歴苦節7ヶ月。

ようやくこれでノビノビっとトレーディングをすることが出来るんだ。


ヒャッホーーーイ!

やったー!

バンザーーイ!!

ルンルンルン♪


無意識に万歳してしまったところで、周りの社員あ~んど課長(おっと、出世したから元課長だ)とハタと目が合ってしまう。

「杉原君、君は一体、何をやっとるのかね」

本部長がチロンと私を見る。

「し、失礼しました!」

「まぁ、いい。奥田君、期待しているぞ」

本部長がにこやかに笑って、課長の肩を叩く。

でも、課長の顔は眉間に縦じわが3本。

頭には角2本。


げっ。

鬼に変貌中?


朝礼は終了し、社員たちは席に戻り、私もいそいそと席に向かって歩き始める。


そんな私の背後から、課長が私を呼び止める。

「おい」

びくっとして跳び上がった後、びくびくびくっと恐る恐~る後ろを振り返る。

「分からん。俺を追い出せて嬉しいんだったら……」

課長は首を傾げると、いつの間にか私の頬に伝っていた涙をそっと指で拭う。

「なぜ、お前は泣くんだ?」