東京の挙式披露宴では、海外出張のトラブルで式に間に合わなかった澤村専務も、新郎父として、美魔女様の隣に座っている。

その2人の前には、課長のお父様の写真が嬉しそうに微笑んでいる。


そして、新婦側の家族席では、もう少しで1歳になる甥の太一(たいち)に手こずりながらも幸せそうな大垣夫婦も円卓を囲んでる。

あれから、治療の甲斐もあってふみねぇの癌も寛解し、、家族揃って出席してくれて……

本当に幸せそう。


私もふみねぇのようなほんわかした家庭を築きたいなぁと思う。



両親への感謝の気持ちを込めて花束を交換し、ソロソロ、会も終わろうとしていた頃、締めの挨拶に村長さんがマイクを掴む。

形式的な挨拶を簡単に済ませた後、村長さんの話が途切れる。

なかなか話し出さない村長さんの様子に会場がざわめき始めた頃、村長さんがようやく口を開く。

「わしが村長になって24年前。まだ、駆け出しじゃった頃、就任早々、村を揺るがす大事件が起きた。覚えとるモンもおるやろ?」

再び会場がざわめき出す。

「あんたさ、由紀ちゃん」

えっ?!

私??

「村には診療所しかなく十分な医療設備が無い中、月足らずであんたが産まれる!っちゅーて、雪ン中、ゴンゾーさんがリヤカーに杉原の嫁ごば乗せて来たときゃ、ほんなごてビックリしたばい。

せやけど、設備が整ってる近くの町に送り届けんばって、みんなで3時間掛けて、交互にリヤカーば引いて、隣町に着いたときゃ、ほんなごて、ほっとしたぁ……。

でも、産まれて730gしかないと聞いたときゃ、わしはもう『この子は助からんかもしれん』思うとった……」

小さく生まれたとは聞いてたけど……。

そんなに小さかったなんて。

今、初めて聞いた。

生まれたときの写真も無かったし、どうしたんだろうとは思ってたけど……。

驚いて、かぁちゃんを見る。

ハンカチに顔をうずめて、おんおん泣いてる。

「由紀に申し訳なくて……。ずっと言えんかったさ……」

いつもは気丈なかぁちゃんが弱々しく答える。

かぁちゃん……。

「ばってん、由紀ちゃんは、立派にこぎゃん大きゅうなられた。そこにあるひな壇の折鶴は、24年前ン時の村のみんなで折った千羽鶴さ。

そして、今日、集まったこれからの二人の幸せを祈って、この会場のみんなで1羽1羽思いを込めて折った千羽鶴、合わせて2000羽おる」


そうだったんだ……。


色褪せた折鶴を1羽手に取る。