ふみねぇの部屋で少し話した後、親子団欒にしてあげようということで、私たちは早々に部屋を後にする。

帰り際、また新生児室の前を通りかかる。

「課長、すみません!もう一度、ちょっと見てもいいですか?」

「ああ」

私は、ビタッと窓ガラスにへばりつく。

その後ろで、課長は私の腰に手を回し、私の頭に頬を寄せる。

「可愛いですね~……」

「オレも生まれたとき、3015gあったらしい」

「えっ!じゃ……」

「さっき、抱かせてもらった時、オレも生まれた時はこんな感じだったのかと思うと、不思議な感じがしたよ」

「結構、重みがありましたよね」

「そうだな……。それにオレが生まれて来るまで、おふくろは36時間陣痛に堪えたらしい」

「36時間!?」

それは……すごいかも。

タラ~っと冷や汗が出る。

「でも、赤ちゃんって、こんなに可愛いんだもの。きっと産んだ瞬間、そんな苦しみ、吹き飛んじゃうと思います」

「……女性は、凄いな」

課長に抱き締められながら、キラキラ輝く赤ちゃん達を見る。

手がちっちゃくて、足なんかこーんなんにちっちゃくて……

幸せのオーラに包まれている小さな生命の輝きが、美しくて、愛おしくて思わず呟いてしまう。


「みんな、幸せになるんだよ~」

そんな私の唇に課長の唇がそっと重なる。

「じゃ、幸せになろうか?」

「え?」

「由紀、結婚しよう」