翌日、佐久間主任は会社に来たけど、すぐにそのまま外出し、そのほとんどを外回りに費やしたのでバッタリと顔を合わせることもなく、ほっとした。

仕事をしていても、ふとした瞬間に、昨日の佐久間主任の思いの丈をぶつけてくるようなキスを思い出し、胸が痛くなる。

でも、あれで良かったんだ。

私は、佐久間主任の思いを受け入れることなんてできないんだから……。

仕事が終わると、私は急いで買い出しをして、課長のマンションに急ぐ。

夕方には帰ってくるって言ってたから、疲れが取れるように体に優しいメニューを中心に料理に腕を揮おう。

実家から送られてきた自家製の味噌を溶かしているときに、玄関の鍵が開く音がする。

「課長!早かったですね?」

「ああ……。ただいま」

課長がホッとしたように微笑む。

「お風呂沸いてますから……」

言っているそばから課長がぎゅーっと私を抱きしめる。

「課長……?」

「悪い。しばらく、このまま……」

めずらしく甘えたさんの課長を、私もそっと抱きしめ返す。

「お帰りなさい……」

しばらく私を抱きしめた後、課長がチュッと私にキスを落とし、ゆっくりと部屋へと向かう。

「あっ!そうだ!お風呂、沸いてますから!ご飯の前にゆっくり入って疲れを落として下さいね」

私がリビングに戻ろうとしたとき、課長が立ち止まって私をじっと見ていることに気付く。

「……課長?」

「お前も……一緒に入るか?」

「はい、一緒に……。えっ?

 ええっ~~~!!」

「先に入ってるから」

「無理無理!無理です!そんなの!!」

「待ってる」

「待ってるって……。

 ちょ、ちょっと待って下さい~~!

 課長~~~~~!!」

そんな私の叫び声なんか完全に無視して、課長はさっさと部屋に入っていってしまう。

ひっ、人の話、最後まで聞こうよ!

課長~~~!!!!!!!!


恋愛ビギナーの私に課せられるかなり難易度の高いウルトラZ級の課長の無理難題に、私はまたまた窮地に立たされる。