いよいよ、模擬売買がスタートする。

みんなの目がモニターに釘付けになる。

徐々に、板(いた:コンピュータ画面上に表示される銘柄・値段ごとの売買の注文)が立っていく。

みんなが固唾を飲んで、板に見入る。

「ヒ、ヒットだーーー!!」

黒だった画面が黄色に反転する。

「「「おおっーーーー!!」」」

周囲から一斉に歓声が挙がる。

「.15(ポツイチゴ:一の位は省略して、小数点以下だけを言うことがある)、テイクーーーン」

「よしっ!!」

手応えを感じた佐久間主任が、興奮気味にガッツポーズをする。

模擬売買とは言え、システム監査も兼ねているから緊張感ハンパない。

でも、順調に約定伝票が打ち出されるのを見て心からホッとする。

たった3ヶ月という短期間でここまで漕ぎ着けられたのも、課長のお陰だ。

スタッフみんなの紅潮した顔が見える。

ハイタッチしたり、ハグし合ったり……。

新しい市場の幕開けにみんな興奮している。

新社長も嬉しそうに、記者さん達の質問に答えてる。



ものすごく華やかで


ものすごく賑やかで


嬉しいはずなのに


涙が止まらない。



私が、一番、喜びを分かち合いたい人は


課長は……


今……



ここにいない……。