でも、伝票書きは新人の私の仕事だ。

「課長に書かせる訳には……」

そんな私の言葉なんか無視して席から立ち上がり、課長はガッチャンガッチャンと伝票に時刻を打ち込む。

そして、席に戻るとものすごい勢い早業で電卓を叩き伝票を書き上げる。

その時間、わずか3分。

鬼神様(おにがみさま)の神業テクに、見渡せば、女性社員の目にはハートがユラユラ、男性社員の目には闘志の炎がメラメラ。

みんな、写メしてるし。

どんだけ、珍しいんだか……

「場が引けたら、営業に行くんだろう」

「え?!あ、はいっ!」

「直帰して良し。ただし、報告はしろ」

「はい!」

課長、サンクスです。

心なしか、敬礼し、急いでディーラーのもとに走る。

でも、ハテナ?

私、課長に今日営業に行くこと、ご報告してましたっけ?

でも、

課長は

鬼だし

地獄耳だから

知ってても不思議はないかも。

ディーラーとの交渉にも無事成功し、後はお客様次第だ。

出掛ける前に、自分の机の上を片付けに席に立ち寄る。

課長の険しい顔は変わらない。

「じゃ、行ってきます!」

「ああ……」

やっぱ、素っ気ないや。

ペコリと頭を下げ、行こうとした私の腕を課長が掴む。

「いいか、杉原。何が何でもモノにしろ。いいな?」

「……はいっ!」

よっしゃぁ~。

やったるどーーー!!

気合がばっちり充実して来たぞ。