会議が終わった後の会議室。

一人で機材を片付けながら、情けなくて泣きそうになる。

バカだ、私。

課長と愛し合うようになって、舞い上がってた。

サナギから蝶になったんだぁ~みたいな錯覚してた。

でも、今日、課長からハエ叩きでバシっと叩きつけられて目が覚めた。

恋愛ボケして、仕事が疎かになってたんだ。

今日、課長にそれを見抜かれてしまった。

でも……

仕事が絡むと課長ってば、マジで情け容赦ないよん。

はぁ……

一撃だった。

今だったら、ハエの気持ちがメチャ分かる。

それくらい、叩きのめされた。

「今日は久々に奥田さんにフルボッコされたな」

背後からの声に驚いて振り向く。

「佐久間主任!」

「ほら、早く片付けるぞ。こんなところで時間取るなよ……って、泣いてたのか?」

私は、ぐぃっと涙を拭くと「いいえ。泣いてません」と佐久間主任から目をそらす。

佐久間主任が私の頭をポンポンと叩くと、機材を片付け始める。


「以前はこんなことしょっちゅうだったよな。で、お決まりの……」

「『バカヤロー』って、課長のペンが飛んできて……」

「そうそう。それで、お前はうまい具合によけてさ、よけ切れなかった俺に絶妙に当たる、みたいな……」

「ああ!あった、あった!ありました!」

「……よけるなよ」

「……すみません」


2人で顔を見合わせてぷーっと笑う。

お腹を抱えて、笑って、笑って、笑いがひいた時、佐久間主任がそっと私を抱きしめる。


「笑ってろよ。でないと、俺はどうしていいか分からなくなる」

「さく……」

驚いて佐久間主任の胸から逃げようとしたとき、会議室の扉が開く。



振り向けばそこには、さっき出て行ったはずの課長が立っていた。