NYに戻る飛行機の中でも、鍵を見つめながらポーっとして、ニヘニヘしてしまう。

そこら辺に転がってるただの鍵じゃない!

これは、課長のお鍵様だと思うと、すごく嬉しい。

NYに降り立つと、佐久間主任が、運転手さん付きの車を用意してくれていた。

「大変だったね。でも、お姉さんが無事で良かった」

「はい、お蔭様で。いろいろとご迷惑をお掛けしてすみませんでした」

深々~とお辞儀をして、顔を上げると佐久間主任がじっと見ている。

「……何か?」

「あ、いや。なんだか、ちょっと見ないうちに雰囲気が変わった感じがして」

雰囲気が変わった?

ん?

どこがじゃ?

服は、前からのだし(ファイナルバーゲン50%OFF)……。

靴も、前からのだし(見切り品3000円均一)……。

口紅も、お化粧だって(以下、同文)……。

以前と変わりませんが。

私と目が合うと、さり気なく佐久間主任が目をそらし、でも、ちらっと私を見る。

「なんか、以前より色っぽい感じが……」

い、色っぽい?!

私が??

あっ!

顔から火が出そうになる。

だとしたら、それは絶対課長のせいだ。

あれからもずっと体中がほてっている感じがするし……。

課長の腕の中で、課長のことがもっともっと好きになった。

そして、あの日分かった。

課長は今まで、私に色々なことを教えてくれたけど……。

今度は、それだけじゃなくて、課長は私に全てを預けてくれたんだ。

愛してもいいんだって。

もっと、もっと課長のこと、好きになってもいいんだって。

「なんかあった?東京で」

佐久間主任の鋭い眼鏡の奥がキランと光る。