「課長、あの、遅れてすみません！

それから、姉の件ではお世話になりました」

課長が事前に根回ししてくれたため、慶東病院から聖セイント大学病院への転院はスムーズに行ったんだ。

「お姉さんは大丈夫そうか？」

「はい！頑張るって喜んでました」

「そうか」

課長は、美魔女様がお父さんと離婚してからもずっとお見舞いに行っていることを知っていたらしい。

だから、私が美魔女様のケータイに出たとき、ふみねぇが入院しているのが慶東病院だという察しがついたと、後にメールで教えてくれた。

だけど、美魔女様は、今、澤村専務の奥様なんだよね。

それなのに、元夫である課長のお父さんの病院にお見舞いに来ていて……

それを澤村専務は知っているの？

そういえば、課長が血が繋がっている本当のお父さんは澤村専務で……。

う～ん。
謎すぎる。

そういえば、入院している課長のお父さん、すごく具合が悪そうだった。

顔色もとても悪くて……。



「……由紀？」

「はいぃぃぃぃっ？！」

急に課長が私の前に回りこんで立ったので、びっくりして大声で返事を返す。

「どうした？」

「え？」

「何度も呼んだんだが」

そうだったの？

気付かなかった。

私は、ついつい、課長ファミリーの不思議な関係を考えてしまっていた。