「ふみちゃん、正直、僕も赤ちゃんは欲しい。

でも、僕には誰よりも何よりもふみちゃんが大切なんだ。

ふみちゃんがいない人生なんて僕にはもう考えられないんだよ。

ずっとそう言ってるよね。

だから、今回は赤ちゃんのことは諦めて欲しいんだ」


大垣さんの必死の言葉にも、ふみねぇが首を横に振る。


「今回は諦めてって簡単に言うけど、年齢的に厳しかし、それに……」

「年齢年齢って、それが何?

僕はふみちゃんの方が大切だって何度言ったら分かるの?

ふみちゃんは独り残されてしまうかもしれない僕のことよりも、そんなに赤ちゃんの方が大切なの?」

「なんば言いよっとね!たぁちゃんの子やけん欲しかっちゃろうが!」


目覚めたばかりで、フラフラしながらも、ふみねぇはガンとして大垣さんの願いを受け入れない。
2人の言い争いがヒートアップしそうになった頃、私がストップを掛け、二人を落ち着かせる。


「待って、二人とも。もしかしたら、ガンの治療もできて、赤ちゃんも産めるかもしれんて……」

「由紀、それ、どういうことね?」


私は慎重に、さっきの課長から聞いた話をできるだけ正確に伝える。


「……ほんなごて?ほんなごて、産めるん?」

「症例は多くなかそうやけど……。

もし、これにかけてみるんだったら、私、ふみねぇの力になるよ」

「赤ちゃんが……産めるかもしれんとね」

震える声で呟くと、ふみねぇは目を閉じて天井を仰いだ。