病室に着くと、目を覚ましたふみねぇと、そのベッドの横にはふみねぇの手をしっかり握り締めて見つめている大垣さんがいた。

私は一度、そぉっと開けかけたカーテンをもう一度、ソロ~リと閉め、気合を入れ直すと、元気に仕切りカーテンを開ける。


「ふみねぇ!起きんしゃったとね。びぃっくりしたさ~。
事故ば起こしたっちゅうから」

「由紀、あんた、ヌーヨークは?
なんでここに……」

「よっ、用事があったけん、たまたまちょっと日本に戻ってきたとたい。
そしたら、ふみねぇがここで入院してるって聞いて驚いたさ」


弱っているふみねぇに気を使わせちゃ悪いから、実はふみねぇのことを聞いて帰ってきたことは黙っておくことにする。


「そがんね。ごめんね、由紀。心配掛けて。
事故まで起こして、それに、赤ちゃんだって……。
でも、うち……どうしても大垣さんとの赤ちゃんば、堕ろすてんなんてん、できんやったと」

「ふみねぇ……」

そばで私たちの会話を黙って聞いていた大垣さんは両手で強くふみねぇの手を握り締め、祈るかのように語り始める。