「しっかりしんしゃい!隆史(たかふみ)さん!!」

かぁちゃんのゲキが飛ぶ。

そうだ!そうだ!!
さすがだよ、かぁちゃん!

でも、そのかぁちゃんが、ボロボロ涙を流しながら信じられないことを口にする。

「でも、そこまで、富美代のこと、好いてくれて本当にありがとうね」

「なんで?なんでかぁちゃん、そがんこと」

噛み付こうとする私の肩を、与作にぃちゃんがつかみ、「ちょ、お前こっち来い」と待合室の外に連れ出す。

「なんね?うち、言いたいことが……」

「ふみは、チチにガン持っとぉと」

「父に、ガン?」

「……お前、今、脳内変換誤っとっじゃろ。父にじゃなくて、乳じゃ、バカタレ。乳がんじゃ」

「乳……ガン?!」

にぃちゃんは、私を廊下にある長いすに座らせるとその横に自分も腰を下ろす。

「お前は、ヌーヨークに行くちゅう時じゃったけん、心配かけちゃいかん思ぉて、みんな黙っとったさ。ふみも『言わんで』って」

「そんなっ!」

「ガンは初期じゃから、治療を優先して堕ろせって。治療に専念せいちゅーとったばってん。ほんなごて、ばかじゃ、あいつは」