ふみねぇの結婚式以来、久し振りに両家の家族全員が待合室に集まる。

私は、挨拶もそこそこに、ソファに腰を下ろす。

精密検査って、ふみねぇと赤ちゃんの身に何が起こってるの?

誰も何も言わない。

重々しい雰囲気の中、ガチャリと扉が開く。

「大垣君」

とうちゃんが歩み寄る。

「すみません。この度は……」

言葉を発しかけて、大垣さんは嗚咽する。

「ふみちゃんが、まさか……まだ、赤ん坊を堕ろしていなかったなんて……ぼくは……」

赤ちゃんを……堕ろす?

私は耳を疑った。

なんば言いよっとね、この人。

ボーゼンとしている私の前で、大垣さんが泣き崩れる。

「僕にはもう堕したって、ふみちゃんは言ってたのに……。なのに、ずっと彼女は……」

おかしいよ!

なんで?!

好きな人の子供を堕ろす女なんていないって!!

私だったら……私だったら、課長との赤ちゃんだったら10人だって、100人だって、ううん、1万人だって、サッカーチームとか野球チームの球団を作っちゃうくらい産んじゃうよ。

それを……この男は、何言っちゃってんの?!

大垣さんの信じられない言葉に、ぐっと握ったコブシがフルフル震える。

「僕は、ふみちゃんさえいてくれれば……」

へっ?

訳分かんない。

ますます混乱している私の横を、かぁちゃんの陰がよぎる。

そして、大垣さんの胸倉を掴んだかと思うと、フルスイングで渾身のハリ手をぶちかました。