そっとついばむようなキスが次第に熱を帯びてくる。

かっ、課長ぉ~。

いけませんわ!

厨房も近いっちゅーところでチューしちゃうなんて……。

「由紀……」

かすかにかすれた課長の声に、ガクンと膝が折れる。

さらに農耕、いや、濃厚になってくるキスに頭がついていけなくなる。

私を抱え込むように抱きしめながら、課長が言葉を続ける。

「大して役に立たなくて悪いが、パーティーへ戻らなくてはならなくなった」

「いえ!そんなこと……」

課長の申し訳なさそうな顔に、トロトロモードからはっと我に還る。

「課長は、ばっちり、しっかり役立ってくださいました!」

「そうか?」

コクコクとうなずく私に、ふっと優しい目をした課長のキスが再度来そうになる。

課長、どうしたんですか?

いつもより、キスが多い感じがするのですが……。

もしかして、もしかするとKY横田から聞いた佐久間主任とのキスのこと気になってますか?

でも、それは……

話す隙を与えないかのように、再び、キスが来る!!!


と思った瞬間、厨房の扉が勢い良く開けられ、タコチュー顔のKY横田が「あーーー!」と叫び、私を指差す。


「いたいた!杉原ちゃん!もう、またまたどこに雲隠れしてるんだよぉ~。
ただでさえ、忙しいって言うの……あっ」

完全に扉が開いたところで、扉の陰にいた課長に気付いたのか、KY横田の目線が課長に釘付けになる。

「では、そういことだから、杉原。厨房の方は頼んだぞ」

す、すっげーーー!
課長ってば、わずか0.01秒の早業で上司の顔に戻ってる。

呆けた私はニヘラ~と緩んだ顔の筋肉を引き締めて、とっさに何とか部下の顔に戻る。

「はいっ!かしこまりました!」

なんて、勢いで敬礼!

きょとんとした課長が、課長がぷっと吹き出す。

あやや、いかん、つい……。

慌てて、敬礼した手を下ろす。


「ははっ!お前って本当に……」

課長は、おなかを抱えて笑いながらも、「じゃ、頼んだぞ」と敬礼を返し、会場へと向かって走って行った。