息もつけないほどの長い長いキス。

頭の芯までクラクラする。

膝がガクンと折れると、課長の腕が腰に回り私を支えた。かと思うと、そのまま抱き上げられる。

「課長?」

課長は無言で私を抱き上げたまま、大股で部屋を横切り隣の部屋の扉を開ける。


げげげっ!

これはかの有名な恋人たちの戦場



『ベッドルーム』!



課長は私を私をベッドの上にそっと横たえると、ネクタイを外し、無造作にスーツの上着を脱ぎ、床の上に放る。

そして、また長いキスが来る。

どーーーーしよーーーーー!

まさか映画とかドラマで見たようなドラマチックな展開が、まさか自分の身に起こるなんて!

きらめくNYの夜景が眼下に広がり、まるで今起きていることが現実じゃないような気がする。


「由紀……」

課長の吐息交じりの囁きに現実にバッチリ引き戻される。


ちゃうちゃう。

夢じゃない!

だけど、課長の甘い囁きに答えることもできないくらい、頭が回らなくなっている。

ん?!

んん?!!

課長の手が、胸元のブラウスのボタンを解き始め、イタイほどの現実にさぁーーっと蒼ざめる。



今日の下着……。

だめじゃんよ。

『戦力外通告』クラスフルセットだった。



まさか、まさかの勝負下着は全部日本で仲良くお留守番してる。


や、やばい!

これは、やばいだよ!!

もうっ!

なんだってまた、よりによって戦闘態勢に入っていない時に限ってこう言う状況になってしまうのぉぉ!!


ともあれ、見られちゃ、困る。

この下着。

それに、ローテーブルのライトが煌々と輝いてるのも気になる。


「あ、あの……課長?電気を……」

「ああ、そうだな」

なんて答えるものの消してくれる気配なし。

課長、軽~くスルー。


ま~じぃで~か~!!


意を決して、ベッドの上を少しずつ少しずつ体をローテーブルの方へと移動させる。

下着を見られる前に、何としてでも電気を消さなきゃだよ。

頑張って指を伸ばして……

くぅっ、届け!

やたっ!

後もう5cm!

最後の力を振り絞って、えいっと手をひもに伸ばす。

届いた!と思った瞬間、課長を道ずれに体がベッドから転がり落ちる。