ええっ?!

NYに行く??

なんでやねん?

この前、課長と話した内容によると、確か、佐久間主任はNYに行かないって言ってたっしょ。

それが何でまたいきなり!


……ナゾじゃ。


課長と言い、佐久間主任と言い、男っちゅー生き物は果てしなくナゾじゃ。


そんなこんなで、15cm右隣に座っている佐久間主任のせいで、場に集中できないまま、仕事が終わる。

「行くぞ」

佐久間主任がカバンを肩に掛けながら立ち上がる。

「ええっ?!もう、ですか?」

「そうだけど」

「でも、まだ私レイティングの仕事が……それに新聞社からの今日の相場のヒアリングが入りますから……」

抵抗する私の言葉を「ふ~ん」と一蹴し、佐久間主任は「山田!ちょっと来いよ!」と入社3年目の山田先輩を呼びつける。

「なんすか?佐久間主任」

「杉原君の仕事、お前、やっといて」

ギョギョギョ!

入社2年目のザコキャラ杉原の仕事を山田先輩様にフルなんて、そんなことできるわけないざんす。

「なんで、俺が……!」

ほら、そうですよ。

でも佐久間主任は、カバンから黒手帳を出すと一気に日付を読み上げる。

「2月8日。3月15日。それから、4月26日。それと……」

山田先輩様の顔色がさぁっと変わる。

「わっ、わっかりましたぁ~!佐久間主任!
喜んで、杉原君のお仕事、是非とも、やらせて頂きます!」


山田先輩、敬礼なんかしちゃったりしてる。


「問題解決。ほら、行くぞ」


ポッカーンとする私の目の前で、にんまりとしながら佐久間主任が黒手帳を閉じる。

「ほら、早く!」

慌てた私は大急ぎで荷物をまとめ、部屋から出ようとする佐久間主任の後を追い駆ける。