佐久間主任は私の手首を掴んだまま、くくっと喉の奥を鳴らして笑う。

「君と奥田取締役は釣り合わないよ」

「なんでそんなこと言いきれるんですか!」


ムキになってしまった後で、ハッと言葉を飲み込む。


「なっ、何を根拠に私達が付き合ってるなんて言いきれるんでしょうか?」

「ふ~ん。『私達』、ね」


ギョギョギョッ!

きっ、気が抜けないぞぉ。

佐久間主任の鋭い突っ込みに、かなり追い詰められているような気がする。


でも、課長!

私、何が何でも課長と付き合っていることを言いません!

と、堅く心に誓いながらも、ボロ出しまくりの状況に冷や汗が出る。


「お前さ、奥田取締役の香水をプンプン匂わせて、エレベーターに乗って来ただろう?
さすがに『えっ?』って思うし、気付くよ」


思わず、服の袖をクンクンしてしまう。

したり顔の佐久間主任の目に慌てて姿勢を正す。


「ははっ。アプローチしてもなびかないはずだよな。
しかし、なんだってよりによって奥田取締役なんだよ。
ハイスペック過ぎだろう」

佐久間主任がようやく噴水の中から腰を上げる。


「大丈夫ですか?」


急いで手を貸すとその手を掴んだ佐久間主任は重心を取りながら、フラフラと立ち上がろうとする。


「君と奥田さんとではアンバランス過ぎる」


アンバランス……。

だよね~。

やっぱ、そうだよね~。

はぁ……。


一気に力が抜ける。


「おっ、おい!杉原君!!ちょっ……手、離すな!!」

「へっ?」


バッシャーーーーン!!!


我に還った時には、とき、既に遅く、バランスを失った佐久間主任は再び噴水の中に滑り落ちてしまっていた。