「佐久間主任!大丈夫ですか!?」

慌てて佐久間主任のもとに駆け寄る。

だけど、全身ずぶ濡れになり噴水に座り込んだ佐久間主任は、水面を見つめたままピクリともしない。

「佐久間……主任?」

ノーリアクション。

おーーーい。

佐久間主任の目の前で手をヒラヒラさせてみる。

まさか……

まさか……

目、開けたまま死んでる?


「きゅ、救急車!救急車を……!」

慌てて、ケータイを取り出そうとする私の手を濡れた佐久間主任の手が掴む。


「佐久間主任……」


生きとる。



「いつ?」

「へっ?」

「いつから、奥田取締役と付き合ってたの?」

「今、そんなこと話してる場合じゃ……」

「答えろよ」

「そんな個人情報、佐久間主任に関係ないことですから!」

「あるよ!オレはずーーっと杉原君にアプローチし続けて来たんだ!」

「アプ……ローチ?」


ハテナ?

そんなの身に覚えありません。

うーむ。

眉間にしわが寄りまくる。


「うそだろ?まさか……気付いてなかった、とか?」


なんのことでしょうか?

訳も分からず、必死に記憶をたどろうと眉根を潜めて、首をポッキリ横に折る。


「だって、俺、君にケー番教えたし……」

「ああっ!……って、それがアプローチなんですか?」

「それだけじゃない!飲み会の後とか君のことを心配して電話したこともあっただろう?」

「……(熟考12秒)おおっ!そうですね。ありました、ありました!」


私がポン!と手を打つと、佐久間主任がガクッとうなだれる。


「杉原君。君の恋愛偏差値、氷点下」