それから数日後、暁くんはイギリスへ発った。




オルドリッジと話をつけてくるから、と言って。





過去を捨て、前を見ようとしてくれた暁くん。





そしてあたしも、ある決意をした。




というのも、暁くんが過去と決別すると言うのなら、あたしも過去ともう一度向き合わなければ、と思ったからだった。




それともうひとつ、暁くんの言葉もあたしの背中を押した。






『彼女が君の何を守って亡くなってしまったのか、もう一度考えてみてくれないか』




アキちゃんが、あの事故で守ってくれたもの…。




そんなことを、考えたことは無かった。




ただ、あたしのせいで…というネガティブなことしか考えられていない。






守ってくれたもの、アキちゃんがあたしを庇った理由。





それは、命?




あたしの命を守ってくれたんだよね…?



それ以外に、何があるの…?





暁くんが一体何を言いたかったのか、わからなかった。





だからあたしは今、数年ぶりにある家の前にいた。




あれからずっと来ていなかった。



だから三年ぶりだろうか。





身体が、どうしようもなく震えた。



指先が冷たくて、動機がやたら速い。




恐怖にも似た感覚は、何度も経験したことがあるけれど、ここまでのは初めてかもしれない。




けれど、暁くんもこうやって向かい合おうとしてるんだよね…?




門前払いされるかもしれない。



また、ひどく罵られるかもしれない。




けれど、もう逃げないよアキちゃん。






あたしは、宮寐とかかれた家のインターホンを、ゆっくりと押した。