「ここだよ」



連れてこられたのは…

浮かれ狂った性欲が渦巻く、
ピンクのネオンに染まったラブホテルなんかじゃなくて、ちゃんとした高級そうなビジネスホテル。



……なんで?

予想外の場所に少し戸惑う。


てっきり、ラブホテルかと思ってたから。

ホテルですることして「泊まってく?」なんて嫌そうな顔で言われると思ってたから。



チラっと彼の顔を盗み見ると、ふわりとした彼の笑顔。

彼に背中を押され部屋の中に入る形になった。




綺麗にベッドメイキングされた大きなWベッド。

机の上に散らばる書類。

あきっぱなしのクローゼット。


その中には彼の几帳面さを現すかのように、きちっと数着のスーツが入っている。



「俺、単身赴任してて…1ヶ月間だけだからホテル住みなんだ」



彼は窮屈にしばっていたネクタイをゆるめながら、苦笑いを浮かべた。

一緒に出た小さなため息が胸をざわつかせる。