私の言葉で、里美が一瞬止まったように見えた。

ゆっくりと手すりから手を離した里美は、その離した手を上へとストレッチするように上げ、くるりと私の方へと体ごと振り向いた。


手をゆっくりと下ろしながら、

一、二歩近付いて


「付き合ってたよ。」


懐かしそうに言った。



少し俯きながら、


「おネエの担任だったんだ。 ・・・渡部先生。」


里美はゆっくりと語り出す。


「・・・。」

「いつからかはよく分からないけど、私が気付いたのは・・・」


私は静かに息を吐き、里美の話に集中した―。