自転車通学の許可証となる安っぽいシールが貼り付けられたママチャリに
女子高生が二人乗りして風を切って行く。


葉山ユキと沢渡藍だ――。




「暑-っ」


「半端ないな、この暑さ」



九月半ばを過ぎてもまだまだ暑い。


高校から駅までの道は緑濃く、自然公園の木々の枝々がアスファルトの歩道にまで張り出していた。



ちらちら…
キラキラ…


木漏れ日が風に踊る。


年中着ている長袖のブラウスの袖をたくし上げ、その腕を自転車を漕ぐ親友の制服のスカートに巻き付けて藍は言った。



「聞いた? マリアまたオトコ替えたやろ」


「ホンマどうしょうもないなぁ、あいつ」


「今度はマジやねんて」


「あはは、また言うてた?」



二人の笑い声を残して自転車は滑るように走る。