「藍」


ホームに降り立ったとき、藍は後ろから声を掛けられた。



「これ、忘れてたから」


驚いて振り返ると、悟が楽譜の入ったトートバッグを差し出して立っていた。


「あ、ありがと…」


藍はそれを受け取るとさっと下を向く。


泣き顔を見られたくはなかった。


(気絶した上にボロボロ泣いてたとか知られたら、目も当てられへん)




「今日はゴメン」


悟がペコリと頭を下げ、下げたきり上に上げない。


今日の出来事を悟は悟なりに気にしているのだろう。