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そよそよと金色の髪をなびかせ、灰鐘はその顔を狼牙の灰銀色の毛に埋めるのだった。




「――何で嘘ついた?」



「ん?
別に嘘なんぞついとらんぞ?」


クスクス笑う灰鐘はギュッとその毛を握った。



「――私は…

幕府が嫌い。

武士だなんだと偉ぶる奴が……


大嫌いだ。」



その声は震え、とても弱々しいものだった。



「―――そうだな……。」




優しい声色で呟くその声は、まるで小さい子をあやすようなものだった。




「着いたぞ?」



「………ちょっと待て、まだ上空だぞ?」



ちょっとしんみりした空気があっと言う間に消し去ってしまった。



灰鐘は狼牙が気を使ったのかと思ったが、気が使える程賢くないと思い直し、狼牙の毛を引っ張った。