『なぁ、瑞希?もう一度言う。それは

わ・た・し・の・え・も・の・だ。』

風で乱れる髪を片手で優雅に払い、不敵に笑って近づく。ふらり、と立ったウェンディーズの前に立ち、しなやかな指先でウェンディーズの顎を持ち上げ、目線を合わせた。

「灑梛!?」
「――――――なんだ」
『別に?ただ…出会ってすぐに殺さなかった事、感謝するんだな』

そう言って灑梛は床を蹴り、後方へ跳んでウェンディーズと距離を取った。

「灑梛…救護班と守護班は、来たんだな?」
『当たり前だ。でなければ私はここにはいない』

灑梛は音楽室の方を見て言った。しかし、すぐに視線をウェンディーズに戻し、下から上まで舐め回すように見たあと、全身傷だらけなウェンディーズを見て笑った。

『あらあら、随分酷いお怪我ですわね、ウェンディーズ様?』

それは、まだウェンディーズが灑梛達の正体を知らなかった時の話し方。

「話しかけるな…」
『あーら、無理ですわぁ、お話ししないと、何もかも分かりませんもの』

クスクスと笑っていた灑梛は、一瞬のうちに表情を殺し屋のそれに変えた。

『瑞希の戦い方は拷問式だからさ?優しかっただろうけど…私は、…そうだな、早く終わらせたいんだ。だけど、お前の苦痛に歪む顔、見てみてぇな』

持ってきた日本刀を鞘から引き抜く。

――――――――――――シャッ

体育館の中は、そんな小さな音も聞こえるぐらい、静かだった。