――楓サイド――


「ほらほら行くよ“かっくん”、“しゅっちゃん”」


「お前が言うなやそれ。真緒たんが言うから可愛いんやんけ」


「……」


……もし、この世にタイムマシンというものがあるのなら。

もし、たった一つ魔法でもなんでも使えるのなら。

俺は今、究極に十分前に戻りたい。


「はー……」


俺を引っ張るやつや騒がしいやつのことなんか忘れ、その場で頭を抱えてしゃがみこんだ。


「ん? なにしてんの楓くん」


「…うるせぇ…」


マジだよ…。

何してんだよ俺…。


あいつ……泣きそうな顔してたな…。

相当戸惑ったんだろうな…。

あーくそ。

マジで何してんだ…。


「…どないしてん」


「別に…」


「別にってこたないでしょ。相当ヘンだよ君。真緒ちゃんとなにかあった?」


「ねぇよなんも」