休憩所にはアキトを抱えたミコトがいた。


「お疲れ」


山本はミコトに近づき、アキトに手を出した。

赤ん坊のアキトは嬉しそうな表情で山本と遊んでいた。


「問題はなさそうだな」


ミコトは休憩所から周囲を確認する役目があった。

現実世界へ向かうことに不満を抱いている者達が攻撃する場合を想定していたためだ。

アカネ達が向かってから今日まで、そのような攻撃は一度も起きていない。


「ジュリーはどこに行った」


NO.2:ジュリーの姿が見えなかったため、俺は聞いた。


「あいつは外に出てるぞ」


山本はアキトと遊びながら答えた。

別に気にする必要はない。

今さら彼女が問題を起こしても意味がないからだ。

ただ、現実世界へ行くのかを尋ねたかった。

俺は机に置いている団扇を持ち扇いだ。

テントの中でも、外の気温と変わらない。

影があるだけマシだろう。

俺が団扇を扇いでいると一人の女性がテントの中に入ってきた。


「タクヤ、全員送ったわよ」ジュリーの声がした。

「送ったか………」山本はアキトと遊ぶのを止めた。


しばらく、テントの中では沈黙が続いた。

喜びというよりも安堵感を感じたからだ。


「あとは俺達だけだな」


俺は次の仕事をするために皆に伝えた。


「そうだね…」


ミコトだけが返事をした。


「さて、皆外に出よう」


俺の指示で皆は外に出た。