俺は『選択の石』に並んでいる人達を眺めていた。

ここで列になり、並んでいるのは現実世界へ向かう最後の集団だ。

彼らが現実世界へ行けば、俺の役目も終わる。

かつて、『W』幹部兼管理部部長だった俺も今は列が乱れないように監視する係員をしていた。

『W』の大半は現実世界へ行き、残った者達はこの列に並んでいる。

家族や友人と一緒に最後の別れをするためだ。

有志で『W』の何人かが係員をしている状況だ。


天気は快晴―――


日の光が強く、汗が流れ、水分を取りたくなった。

座っている椅子の下に置かれた水筒を取り出し、水分を補給する。

その後、ポケットに手を入れ、閉まっているタオルを出そうとした。

ポケットからタオルを出したことで、手帳も出てきてしまった。

手帳は地面に落ち、適当なページが開いた。


「おっ………」


俺は落ちた手帳を見た。丁度、『C』の写真のページだ。

少し手帳を見てから、拾った。

そのページを開いたまま、しばらく眺めた。

懐かしいな。

初々しい『C』のメンバーがそこにはあった。


12年―――


このメンバーで過ごした時間は短く感じた。

それほど忙しかったからだろう。

予想したよりも早く、この段階まで進めた。

ここに写る4人はこの世界の誰よりも優秀だったと言える。