その帰り道、俺は終始無言だった。
『あー、なんか宇佐美さん引っ越す話しでしょ?
俺も今日噂で聞いたけどまじで急だよね。普通今学期までとかじゃない?』
新井の声さえ今は遠くに感じる。
『なんか家の荷造りとかでもう学校もあんまり来ないみたいだよ』
『………』
『成見、同中なのに何にも知らなかったん?』
あぁ、知らねーよ。同中どころか同じ小学校で宇佐美が変わるまではまぁまぁ親しいと思ってたよ。
でも、そう思ってたのは俺だけだったのかも。
中学では俺も普通に友達出来たし、素行の悪い連中と遊んだりもした。そんな俺と宇佐美の接点が徐々に消えていき、残ったのは小学生時代の恥ずかしい記憶だけ。
誰も俺が泣き虫でいじめられっ子だったなんて思わないし、宇佐美が本当は明るくて男子を蹴散らすヒーローだったなんて誰も知らない。
お互いに変わったし成長もした。
だから本当に、
俺達には接点なんてないのかもしれない。
『………気になるなら家とか行ってみれば?場所知ってるんでしょ?』
『行かねーよ、』
俺は気遣う新井を置いてスタスタと歩き出した。
何も言わないって事は所詮その程度って事だ。
勝手にどこへでも行けばいい。俺には関係ない。