「ね、美佳って呼んでいい!?」
「え…?あ、うん。全然。」

陽菜のびっくりするくらいの勢いで、少し距離の縮まった2人。

「じゃ、私からも提案!先生にクッキー作って渡さない?」

次は私の提案で、クッキーを作る事に…。

それまで話の絶えなかった私達が、とても静かになり、一生懸命作った。
見た目や味は、これといって特別凄いわけじゃない。
でも…気持ちはいっぱい詰まったクッキー。

**

塾に行くと野村先生が丁度、授業を終えてきたところで…。

「あ、先生!!」

陽菜はすぐさま渡しに行った。

「え、まじいいの?ありがとう!」

野村先生とても嬉しそう。
陽菜もとても嬉しいそう。

一方私はー…。


「あの…っ。」
「ごめん!また後で。」

「先生…。」
「ちょっと待ってて。」

…。
先生はなんだか忙しそうで、なかなか渡せなくて。
よし最後渡すんだって思った時だった。


「あーっ、たらこ食べてーっ!!」

先生の声が聞こえた。

「わははっ。」

事務所からの会話。

あ…先生これ完璧忘れてるよ。
忙しいのは分かるよ。
でも…でもね。
こんなちょっとした事だし、仕方のない事かもしれないけど…なんだか悲しいよ。

「…。」

自然と涙がでてきて、私は慌てて塾を飛び出した。