「沢山先生ーっ!!ここ…。これ教えて下さい。」
「また相原かよ。俺は忙しいの。分かるか?この塾で1番忙しい人間なんだよ。」

今、私相原美佳(あいはらみか)が話しているのは塾の担任の沢山康之(さわやまやすゆき)先生です。
そしてここは進学塾で、私は受験を間近にひかえた中学3年生です。

「沢山先生私の担任じゃないですかぁっ!!私人見知りするんで他の先生とか無理ですもん。」

…なんてね。本当の事だけどこんなのただの口実。
沢山先生がいいだけ。

「おっ!丁度いいところにあそこに暇そうな先生が!!。」

沢山先生の視線の先には20代前半っぽい男の先生。
確か中川絢哉(なかがわじゅんや)先生。
2年生の時にちょっと国語担当してもらってたっけな…?
でもあんまし覚えてないや。

「ほらっ絢哉!こいつ教えてやってよ。」
「え…僕ですか!?」

えっ中川先生なの…??
大丈夫かなぁ?
沢山先生がよかったな。


「…で、どこが分からないんですか?」
「えぁっ…ここのとこ…。この英文わかんなくって。」

すると先生はじーっと問題をみた後事務所の奥へ帰っていった。
「え…中川先生?」

放置されたのかと思うとすぐに帰ってきた中川先生。
手にはペンと紙と辞書。

「あんまし英語できないんだよなっ笑さてやろっか。えっとここは…あ!ほらよく考えてみ?」

中川先生は少し苦笑いをした後、急に真剣な目つきになった。

「…えぇ?汗」
「ほら、ここの文法はこうだから…。」

なかなか理解のできない私に、投げ出す事なく、嫌な顔もせず一生懸命教えてくれた。
気がつけば中川先生に教え始めてもらってから2時間ほどたち、23時20分だった。

「あのっ、本当にすいませんでした。ありがとうございました。」
「いやいやいいよ。まぁ残りはまた明日おいで。明日も僕、ここにいるんで。」
「…?明日って祝日なんじゃあ。塾あいてるんですか?」
「え…あっ笑」

やっちゃったって顔で苦笑いする中川先生。
くるっと反対を向くと…。