いよいよ公立入試前日になった。

「明日…頑張ってこいよ。」
「はいっ!!」

沢山先生から最後の応援の言葉をもらい、中川先生に送ってもらう事になった。


「…てかさ、寒くない?その格好。ブレザーは?」
「実は今日、朝から緊張してて学校に着て行くの、忘れちゃって…。」
「ん…、これ着な。」

先生が自分のコートを私に差し出してきてくれた。

「でも、先生も寒いです!だからいいです。」
「僕はいいんです。君明日受験ですよ?ほら着て。行くよ。」

借りたコートはとても暖かくて…先生の香りがした。
ねぇ先生…だけど苦しいよ。
胸が苦しいの。
先生はずるいよっ。
生徒への優しさだって分かってるの…。
なのに…こんなのもっと先生を好きになっちゃう。


「試験…頑張って。」
「はい。あ、コートありがとうございました。」
「あのさ、塾の卒業会…来るよな?」
「へ…?」
「あ、もういい!相原さん来ないなら俺も行かないかなぁー…。」

卒業会…あ!塾であるお別れパーティーみたいなやつの事かな??

「え、や…行きますよ!!」


ペンの動く音と紙をめくる音、消す音…そんな音だけが試験会場となっている教室に響く。
大丈夫…頑張った自分は裏切らない。
ドーンと自信をもつんだ。

英語32点,数学25点,国語23点,理科20点,社会13点。
やばい…。

「あ…中川先生…。」