「嘘っ!え…本当に?」

桃花は大声を張り上げて目を丸くした。
そこに私は小さくうなずく。

「え…美佳ちゃんて絢哉が好きだったんだ。」

私は"先生"を好きになってしまった事。
そしてその"先生"が中川先生だって事、桃花に打ち明けた。
もちろん迷った。
自分が世間で言われる"普通"からすると、おかしいって事分かってたから。
このこと言ったら何か言われないかとか、不安だったから。
怖かったから。
でも桃花ならまだ分かってもらえるかなって思った。

「どうしていいかわかんなくって…。」

どうして桃花に相談したか。
桃花も好きな先生がいるから。
だけどまだの"好き"と桃花の"好き"は少し違うの。
桃花の"好き"はアイドルに対してのようなもの。
好きな人はちゃんと他にいるんだって。
でも桃花以外の誰に相談すればいいのか分からなかった。
自分の気持ちに気づいたところで、どうしたらいいのかさっぱりでとにかく誰かに聞いて欲しかった。


「でもさ、2人仲良いしいけるんじゃない!?」
「そうじゃなくて…。だって"先生"だよ?きっと駄目だよこんなの…。」

"先生だから"この時の私は、そう言い訳を作っていた。
相手は先生イコールこの恋は叶わないんだと、"実在しない方程式"を勝手に自分のいいように、作りだしていた。

「…じゃあ諦めきれるの?好きなんでしょ?」
「うん…。好き。」
「だったらいいじゃん。年齢とか立場とか今気にしなくていい!!頑張ろ?あたし応援するからさっ。諦めないで?」


"諦めないで"沢山の人に言われた言葉。
私は桃花に打ち明けた後、同じクラスで仲の良い女の子京香(きょうか)、男の子唯織(いおり)、親友の陽菜(ひな)にも話した。
いつの間にか小さな噂になって、私が中川先生を好きな事は色んな生徒が知っていた。
もちろん批判的な意見もあった。
"先生は皆の先生た"とかって。
正しい意見かもしれない。
でも私が気にしてるのは、結果じゃないの。
とにかくこの想いをいつか…中川先生に伝えたいの。
皆、ごめんなさい。