外は生暖かいのに、廊下は冬のように寒い。

 学校の中でも、一番日が当たらない場所なのか。

 今は三月。卒業式が目前に迫っている。

 そのせいか、冬谷桜から笑顔が見られない。

 桜は中学三年生。

 受験も無事終わり、これから大きく羽ばたいていこうとしている。

 だが、そのために何人、何十人、百何十人と別れていかなくてはならないのか。


 いや、別れるだけが、桜を悲しませている原因ではない。


――春増 海翔(ハルマシ カイト)。――

 海翔は、桜が入っていたバレーボール部の後輩。

 年は一つしか離れていない。

 しかも、小学校も同じだ。

 桜が通っていた小学校から、今の中学に行った人は数少ない。

 あまりにも奇跡すぎる。