「ただいまぁ。
浩介~。御披露目会に行って来たわよ」

姉貴が事務所に帰って来た。

「はい。これ試作品」

オレの目の前には、あの時、春花ちゃんをイメージして完成させた、あの香水瓶が置かれていた。

見ただけで、胸がズキリと痛い。

でも。
これを見ると、キミに似合うだろうと思って作ってた、あの頃のふわふわした気持ちも後から浮かんで来る。

オレはどこで間違えてしまったんだろう。

どこで、キミに嫌われてしまったんだろう。

キラキラ光る、小さめの瓶を見てると、無性にキミに会いたくなった。

「姉貴。これ貰っていい?」

「そうそう。今日ね。浩介のアパートのお隣さんに…」

姉貴がオレに何かを話し掛けていたが、全然違う事を考えていたオレの耳には全く届いてなかった。

春花ちゃんに会いたい。

オレの体に流れる血が、急に沸騰したかのように流れ始め、力が出て来た。

「オレ。行って来る!」

「え? ちょっと? え? どこへ? 浩介?」

戸惑う姉貴を無視して、オレは外へ飛び出した。

キミの為に作った香水瓶を持って。

会いたい。
会いたいよ、キミに。




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この数時間後、愛しの彼女を腕の中に閉じ込めた葵くんであった。良かったね。


会いたい*end