【雅翔】





「詩乃ちゃん頂戴!」


「誰がやるか!」


「ケチ!」


「ケチじゃない」





…咲羅にデレデレだった蘭さんもそれだけは譲れないのか…

見た目チャラいし、清楚系の詩乃さんを好きになるって意外だな…



「雅翔くん」


「はい」


咲羅のお父さんは黒髪で優しそうな目の整った顔立ち

まだ2,30代に見える

椿さんにそっくり……




「ありがとう」


「へ…?」


ありがとう…?
何だ?いきなり…


「咲羅があんなに心から笑うようになったのは…君のおかげだよ」


「ああ…」


そういえば母親、亡くしてたんだっけ……



「あれ以来、私にも、椿達にも、なんだか遠慮がちだったんだ……」




……自分のこと、凄く責めてたからな…



「だけど、今日の咲羅を見て分かった。咲羅は君に救われた。そして何より、綺麗になった」


安心したように咲羅を見て微笑んだ





……みんな、咲羅を気にかけてるんだな…




本当は泣き虫で、怖がりで、強がりで、弱くて、心配性で、芯は強い……そんな矛盾じみた性格の咲羅が、みんな心配で心配で仕方がないんだよな……