「妃芽、行くよー」

「はぁーい! ……うぁっ」



波に呼ばれて慌てたのか、机の上の物を全部落として必死に拾う……

俺の彼女、桜田妃芽。




毎日毎日、鈍くせぇ。

んとに……


「見てて飽きないよね、妃芽ちゃんて♪」


俺が思ってた事を、声に出す准。



「馬鹿なだけじゃん?」



―ゴンッ



「ってぇ……」



頭を押さえながら、殴った本人を睨んだ。



「可愛いって思ったくせに。
素直になるんじゃなかったけ?」



そうだよ?
俺は、素直になるって決めたんだ。


桜田に……素直になるって。


決めたばっかだったのに。


でも、今のは准が先に言うから。
悪いのは、准じゃん?







勘違いされねーように言うけど。



決して俺、優しくないんじゃない!
決して俺、素直じゃない訳でもない!


ただ……ただ桜田の前だけは、駄目なんだ。


素直になれないってか。
素直じゃないってか。



だからっ!



准に宣言したんだ。

この年でダサイけどさ?
こーでもしなきゃ……一生無理な気したんだ。


だから、俺は素直になる。

……なるべく。