「…何してんの」



…これだから嫌なのだ。


久しぶりの休日、昼勤務のコンビニバイト。

ひっきりなしに来る客に愛想笑いをふりまきながらそれらをさばき、やっと時間が経って店員からただの乙女の一人に戻った、その直後。


「お迎えに来ました、山田さん」


コンビニの駐車場にこれでもかと陣取った黒光りするボックスカー。

あんぐりと開いた口が塞がらないあたしの視線の先にあるのは、その車の窓からのぞいた、うっとおしい笑顔。眩しい金髪。


「…あの、家…すぐそこなんですけど」

「家にお送りするんじゃありません」

「は?」

「ピクニックに行こうと思って」

「…ピっ!?」


…脳天突き抜けて、喉が裏返ったような声が出た。


ってゆーかアポなしでいきなり何だよ。

ってゆーか車持ってたんですか。

ってゆーかなんでそんな満面の笑みなの。


…ってゆーか。


「…なぜにピクニック」

「はい!お天気があまりにもよろしいので!」



…これだから嫌なのだ。

彼の突拍子もない行動は、一度も読めたことがない。


呆然と立ち尽くすあたしを前にしても、依然変わらないどうも気にくわない笑顔。

だからあたしも、皮肉たっぷりに片端だけ口元をつり上げて笑ってやった。



彼の名前は、カボという。

その由来は毎日毎日、飽きもせずかぼちゃプリンを買っていくから。

一言で彼を説明するとなると、まさしく変人。…いや、いっそ変態の域である。


「…ピクニックとかいう単語、久しぶりに聞いたんですけど」

「僕も何年かぶりに使いました」


…あ、へぇ。


「でもすごいんですよ、山田さん!日光浴すると、人って体内でビタミンDを作り出せるらしいんです」


…そんな雑学、別にいらないんですけど。

日光浴とか言ってないで、かぼちゃプリンから得た葉緑体で光合成でもしてればいいのに。