制服デート。


その響きに一度は憧れを持つ女子は多いと思う。

かく言う平凡女子のあたしも、その一人だったりするのだけれど。


「山田さん、窓際のテーブルでいいですか?」


あたしを振り返ってにっこり微笑みかけるのは、東山浩一郎と言う男。

通称、カボ。あたしがバイトしているコンビニで毎晩かぼちゃプリンを買っていくから、あたしが名付けたあだ名である。


カボが手にするトレイの上には、ポテトとハンバーガーが二つずつ。それから、二人で半分こしようと買ったシェイクがひとつ。


…まさか、こんな形で制服デート、とやらが実現するとは思わなかった。


つい今し方。学校が終わって普通に帰ろうとしたあたしは、校門の前にカボの姿を見つけた。

あたしを発見すると満面の笑みで大きく手を振ってくるカボ。


本気で驚いた。なんでここに居るのか。

…いや、それ以前に、カボがブレザーの制服を着ていたことに。


「カボあんた、それどうしたの!?」


カボは高校をとっくに卒業したはずだ。

あたしが詰め寄ると、カボはにっこり満面の笑みを浮かべながら言った。


「だって山田さん、前会った時に"一度くらい制服デートしてみたい"って言ってたから」

「…たしかに言った気もするけど…」

「今日親戚の家に用事で行ってて、いとこがもういらないからくれたんです、これ」

「…今更カボに必要ないでしょ」

「ねまきにでも使って、って言ってました!!」


…誰も好き好んでブレザー着て寝たりするヤツいないよ。しかも、早速それ着て母校でもない学校の校門に立つヤツなんてもっといないよ。


そんな普通じゃないことを、普通にやってしまうのがこのカボだ。


しかもカボ、無駄に男前な顔の上に金髪だから、ブレザーがスーツに見えてまるでホストだ。

校門から慌ててカボを連れ去るあたしを、クラスのみんながものすごく疑わしそうな目で見ていたんですけど。

「山田、ついにそっちに走ったか…」みたいな可哀想な視線も送られたんですけど。


…絶対、誰もあたしの彼氏だって気づいてない。

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