桜の季節はとうに過ぎ、じめじめと鬱陶しい梅雨の時期に入った。
ある日の昼休み。
あたしは、一年生の教室が並ぶ二階校舎の廊下を闊歩していた。
ギュっと握りしめた拳。
一歩また一歩、踏み込む足にも力が入る。
目的はただひとつ──っていうか一人!
そう、あたしは探していた。真剣だった。
貴重な時間を費やし、探していたんだ。
(もう、何処に行ったのよーっ!)
怒りに満ちた胸の中は爆発寸前。
いつものように捜索を続け、一番奥の一年八組の前を通り角を曲がった時。
(やっと見つけた!)
見覚えのあるシルエットを発見したの。
「ミユちゃんのアド登録……っと! んっと、じゃあ早速だけど今日って空いてる?」
階段の踊り場で、もたれるように壁に片腕を預けた男が、女に向かって囁いて。
「もちろん、空いてますぅ♥」
男の腕の中にいる女がこたえた…………。
──って、もうっ。
相手の女子もノリノリじゃん。
まったく所構わずなんだからー。