「―――カット! ちょっと休憩入ります!」


若いADの声。


共演しているハルと、相手役の若手女優二人が、談笑しながら休憩してる。


けれども、俺は何と無く笑い会える気分じゃなくて。


(――はぁ……調子狂ってる。)


原因は、そう。雛乃。



水泳の一件以来、陰湿な嫌がらせを受けているのを、度々目撃していたのだ。


止めたかったけれど、原因の一つである俺が入っても悪化するだけだと諦めていた。


(………いや、違う、よな。)



――怖かったんだろ。


奏鈴に来る前に逢った、あいつとの思い出が、フラッシュバックして、動けなくなったんだ。