ポーーーン

マンションのエレベーターの間延びした音


真冬の凍った空気に靴音が響く


鍵をズボンのポケットから取り出しながら部屋に近づくと、ドアの前でうずくまる影が見えて足を止めた



相手もこちらに気づいて顔をあげる


「おかえり」


あごくらいまでの長さの黒髪

自然と横に流された前髪

夜でもはっきりと見えるまん丸に縁取られた目

笑うとちらっと八重歯が見えた



「お前、だれ?」

「サムイ‥‥‥部屋入れて」

「無理」




その時、バサバサという羽音を立てて飛び立った鳥

彼女は好奇に目を輝かせて廊下の塀に飛び付いた



その隙にドアに駆け寄ると急いで鍵をあけて

バタン!

と部屋に入って中から鍵をしめた


少し遅れて「あっ!」と外から声が聞こえてくる


あぶね……

あぶねえ女だ……

泥棒??

殺人犯??

まさか、デート商法とか……??


カリカリとドアをひっかく音がして、ぞっとした