気づけば兄ちゃんがいなくなっていて、まぁいいかと一人で年を越そうとしていたときだった。



「おじゃましまーす!」



軽いノリで部屋に入ってきた男。



鍵閉めてなかったのか…なんて思いつつも、聞き慣れた声の主に兄ちゃんがいないことを伝える。



「へぇー…」



少しにやつきながら返事をしたリクに、それでも上がる?と言えば素直に部屋に入ってきた。



お笑いを見ながら年を越そうとしていれば、リクが不思議そうにこっちを見てくる。



「なに?」



そう言えば、リクが蕎麦作んないの?なんて言い出した。



「あぁ…」



立ち上がって蕎麦を作り始めれば、リクがまた口を開く。



「インスタント?」

「当たり前じゃん」



料理作れないし…、と言えば不満そうに顔をテーブルに伏せられた。



なんだこいつ?



イライラしつつ蕎麦を出してやれば、こっちをじーっと見つめてくる。



目があうと、リクが口を開いた。



「瑞希ちゃんってさ、可愛いよね」



思わず、持っていた割り箸を落とした。



なに言ってんだ…なんて思いながら、心臓がいつもよりうるさい。



この気持ちはなんだ……?



変な感情をかき消すように蕎麦を口の中に放り込んだ。