気付けば、片岡和人の姿を探している自分がいた。

大学で偶然会ったように装っては、彼に声を掛けた。

どうしようもなく、彼を目で追ってしまう。

笑うと右端の口角がちょっとだけ上がる所とか、

煙草を吸う時、少しだけ苦そうな顔をする所とか、

照れ笑いした後に、目線を上げた時の顔がセクシーなところとか、

・・・とにかく、彼に恋をせずにはいられなかった。



だから、あの日、ドキッとした。

「かっずぼ~ん!たっだいま~!!」

私が、マンションに帰ると、いるはずの彼の気配が無かった。

「おーい!いるんでしょ。夕飯買って来てあげたぞぉ。一緒に食べよー」

そう言いながら、ドアをノックして、彼の部屋のドアノブに手を掛けた。

・・・鍵が掛かっていた。

寝ているのかな?

私が独りリビングで夕飯を食べようとし始めた頃、片岡和人は部屋から現れ、それから程なくしてハルナちゃんが泣き腫らした目で出てきた。


2人の間に何かあったんだ。

私はすぐにそう感じた。


それから数日経っても、私はやっぱりどうしてもあの日のことが気になっていた。

それで、ある日、彼がお風呂から上がったところを捕まえて、リビングでその時の話を切り出してみた。

正気では聞けないかもしれないから、事前にビールを買って、2人で飲みながら話すと言うさり気ないシチュエーションを作って。

「あのさ。言いたくなったら言わなくてもいいんだけどさぁ・・・・・。ハルナちゃんと何かあった?」

「・・・・・・」

「ハルナちゃん、泣いた目をしてたから気になって・・・」

「・・・抱いた」

「ん?」

「抱いたんだ」

この彼の言葉はとてもショックだったように思う。

でも、私は努めて平静を装って、質問を続けた。

「え?!ついに・・・ヤッちゃったの?!」

軽く聞いているように自然に振舞ったけど、声が上擦っているのが分かった。

「いや、正確には未遂だけど・・・」

「そーだったんだ。それで・・・か」

私のビールを持つ手がカタカタと震えた。