「いや、それは無理だ」

彼は、気まずそうに私から視線を逸らすとベッドから起き上がった。

「それぐらい、叶えてくれてもいいじゃん!」


私は最後のお願いに食い下がった。


「無理だって。嫌がる女を無理矢理抱いた上、今度はその気もない女にキスしろってか?!お前、そこまでオレをロクデナシに貶めたいか?」


それもそうだけど・・・・・・。


「私、かずぼんのことが好きで、今にも死にそうなんだ。だから、心肺蘇生法の練習のつもりでさ、・・・してくんないかな?キス・・・」

私は彼のベッドにコロンと横になると、

「私のこと、レサシ・アン(心肺蘇生法訓練の人形)だと思ってさ」

キスだけじゃなくて、できればその先も。
覚悟を決めて目を瞑った。

「おーい。リョーコさん、頭大丈夫ですかぁ?!」

彼は呆れ気味に、私の頭をノックすると、鼻を思いっきり強くつまんで、引っ張った。

「この仮病クランケには気道確保の必要すらねーな!」

「ひっどーい!けち!いいじゃん、キスくらい!」



私は、絶対に自分のものにならない彼に心底むかついていた。


そんな私の心を見透かすように、彼は気まずそうに苦笑いした。