「火事だーっ!!」


誰かの叫び声が響いた。

辺りを包むは、荒れ狂う炎の海。

絶望の色に染められた、果てしなき黒き煙。

そして――


降り注ぐ瓦礫に飲み込まれていく、最愛の妻と娘の姿だった。


「彩――っ!! 杞々巴――っ!!」


男の悲痛な叫び声が響き渡った。

寄り添うように抱き合う2人の姿は、男の目の前で瓦礫の中に消えていく。


「今、助ける!!」


だが、男の右足もまた、崩落した天井に挟まれて動けない。


「誰か……誰か――――っっ!!」